第22章 41日目の深淵
「どこかって?」
「ええと、私達も行方はわからなくて。
ある日突然いなくなりまして…。」
違和感を感じ、1つ質問をした。
「ルルさんのお荷物は残っていますか?」
「ええ。お部屋に少しあるかと思います。」
彼女の使っていた使用人部屋へ案内され、中を伺う。
四人部屋の可愛らしい空間が広がっていた。
2段ベッドが二つ置いてあり、ピンクの壁紙と薄いエメラルドグリーンのカーテンで簡単にまとまりのある部屋だ。
二人のメイドが休んでおり、私に気付くと驚いたようにこちらを見ていた。
「カーティス大佐…!」
「本物かっこいい!」
「食えねえおっさんなのに……。」
ガイが一言余計に言ったのを流して、
「ルルさんのお荷物をご存じですか?」
と聞く。
可愛らしい女性達は素早く立つと用意してくれ、こちらです、と小さな籠を渡してきた。
「ふむ……服が2着ですね。下着はそのまま。」
「よく平気で触れるなお前。」
「何故ですか?普通ですよ。」
人の目を見よとガイは周りをきょろきょろと見ながら言う。
「それから日記……。」
日記までそこにあることを不審に思いながら中を開くと、私が書いた手紙が入っていた。
涙の染みと、強く握ったような形跡があった。
どこか愛しさが込み上げるその紙をじっと眺めて、懐にしまう。
嫌な予感がする。いないというだけでも怪しいのに殊更それは増すばかり。
「誘拐された形跡もないとなると……」
「か、カーティス大佐……アポなしでなんのご用件ですか?」
慌てて駆けつけたこの屋敷の主人が狼狽えながら私に尋ねてきた。
「なんのご用件かは、貴方が一番わかっていらっしゃるかと。」
笑顔でそう返答したが、後にガイは、世界で一番怖い笑顔だったと言った。