第22章 41日目の深淵
ぼんやりと空を眺めた。
彼女を手離してから早1ヶ月経過。
いつもの業務報告書のついでに書いている日記を久々に書くことになるとは思わなかった。
その日も近くの町の魔物の巣を駆除するという任務を遂行し、久々にルーク達と昼食を取った。
彼らも今回の任務を手伝ってくれたので、グランコクマの名物カレーでも楽しんで貰おうと誘ったのだ。
「あれ?この前の女の子は?」
ガイが興味津々に聞いてきた。
「ああ、新しい職場が決まったので今はそちらで暮らしてるんですよ。」
彼らに悟られないように笑顔で言う。
「働き者のお嬢さんで、やはり城にいるとつまらなかったんでしょうね。
早く仕事を下さいと急かされて。一時期少し忙しかったですねぇ。」
誤魔化すかのように少し早口で嘘をつく。
「へぇー。」
水を一口飲むと、食事が出てきた。
「どうせこの近くなんだろう?このまま会いに行こうぜ!」
「おお、いいねー!俺も会いたい!可愛かったしな!」
飲んだ水を噎せそうになるのを堪えて二人の会話を聞き流す。
「お忙しいんじゃないですかね?
私も1ヶ月近く会っていないんですよ。」
「マジかよ!じゃあ任務終わったし、今から行こう!」
「……はぁ。」
余計なことを言ったなと後悔する。
彼女は手紙をまだ持ってくれているのだろうか。
それとももう他にいい人を見つけただろうか。
二人がカレーを掻き込んでいるのを見て、私もルルさんに会うのが少し楽しみになってきているのを隠せなかった。
例の屋敷を3人で訪ねた。
タルタロスで来る程でもなかったので、食後の運動がてら馬で駆けた。
丘を1つ越えるとそこはある。
陛下の親戚というわけでもなく、昔から代々この土地を守っている地主であることは知っていた。
評判も良く、人が良いことで有名だったので、安心してルルさんを推薦できた。
門を叩いて、使用人にアポなしで申し訳ないと詫びを入れ、茶菓子を渡して中に入れてもらう。
「すみません、先日から働かせていただいてますルルさんはいらっしゃいますか?」
「え?あの子なら数日前に辞めてどこかへ行かれましたよ?」
「……え?」