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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第3章 2日目の遊戯


雑務を終わらせようとして部屋の出入り口に向かうと、小さな彼女が私の裾を掴んだ。
思いがけずだったようだが、確かに一人で怖い思いをした彼女を一人にしておくのは少しまずかったと思った。
うるんだ瞳から流れる涙を舐めとりたい気持ちを抑え、軽い身体を抱えて寝室にたどり着いた。
今まで寝室がここまで遠かったと思ったことはあっただろうか。
いずれは美味しくいただこうと思い、懐柔出来るのを待っていたのだが、こうまで儚げだと私らしくなく気が急いた。
何故だかわからないが、一目見て、無性に惹かれたのだ。
顔立ちか、滲み出る性格か。
一目惚れなんていう言葉は幻想に過ぎないと思っている。
しかし、もしその理屈がわからないままなら、これは一目惚れに分類すべきではないのかと思った。
いずれにしても、救命して一緒に暮らしていればわかることだろうと思った。
悪く言えば、被験体。
要は意思とは関係なく、直感で彼女を連れてきたのだ。
住み込みで働ける場所はいずれ提供する、なんて言ったが、そんなものは職権濫用で、城なり軍部なりいつでも用意してやれる。
今はそこではない。
「恩返し、していただけますか?」
勝手に助けておいてよくそんなことが軽々しく言えたものだ。
彼女は大きく頷いた。
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