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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第2章 2日目


「お疲れでしょう?今日も先にベッドで寝てください。私は雑務を処理して戻ります。」
「……」
この広い部屋で急に心細くなった私は、何も考えずに、ジェイドさんのシルクのブラウスの裾を掴んでしまった。
「…どうしましたか?」
「あ、すみません……。なんでもありません。」
ぱっと手を離して、先程念じていた困らせないようにという私の考えはどこにいったのかと必死に自分を叱った。
「……思ったより。」
「え?」
「何でもありません。落ち着くまで一緒にいますよ。」
「あ、ごめんなさい。いいんです、ごめんなさい。」
情けなくて思わず涙が込み上げる。
「ああ、泣かないで下さい。事故があったばかりで心細かったですよね。」
綺麗な指で溢れてくる涙を拭いてくれた。
「…っ、すみません、困らせるつもりはなくて。こんなに良くしていただいているのに、情けなくて。本当にすみません。」
ふわっと同じ石鹸の香りがしたと思ったら、私は大きな身体に抱き締められていた。
「今日は一緒に寝ましょう。隣にいますから。」
キングサイズの天蓋付ベッドに横たわらせてもらい、ぎしっと音がしてその横にジェイドさんが来てくれた。
そしてまた抱き締めてくれて、背中を優しく撫でてくれた。
なんとなくその優しさに甘えたくなった私は、恥ずかしながらも、ジェイドさんの胸元に顔を寄せた。
きっと、耳まで赤くなっていたと思う。
部屋が暗くてよかったと心底思った。
「助けてくれたのがジェイドさんで、よかったです。こんなに良くしていただけて。私、なんてお礼をしたら…。」
「私は何もしていませんよ。
こちらこそ、ルルさんのような可愛らしい方にすがって貰えて光栄ですよ。」
「そんな…。」
ふとジェイドさんが、耳元で、掠れた声で言った。
「私の言う恩返し、していただけますか?」
「も、もちろんです!
どんなことでも、がんばりますっ!」
私は嬉々として、顔を上げた。
赤い瞳が暗闇のなか、妖しく光ったのが見えた。
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