第13章 7日目の嗜虐
ルルさんが城内で仕事を始めるということに際して、あらゆる心配をしてしまう。
他人の手に少しでも触れられるのがどうにも言い知れぬ恐怖があった。
考えすぎてもすぎないほどであると私は思っている。
一通りの注意事項を述べると、ルルさんは楽しそうに笑った。
私と許嫁に思われるのが不安だと言っていた。
いっそ、そうしたほうが安全なのではないか。
ふと思ったが、それも恩返しの命令の1つと取られてしまっては困る。
こんな時の解決法を知らないほど、私は人を拒絶して生きてきた。
我ながら今だけは情けなく思う。
身体を繋いでいる間だけは、彼女も私のことを想ってくれている。
それはわかっているが、尚も拒絶される恐怖心に打ち勝てない。
ゆえに一歩踏み出せない。
「失礼致します。」
とノック音と共にメイドの一人が入ってきた。
「ルル様、明日からのお仕事が決まりましたので、制服を差し上げます。
裾上げの採寸を致しますのでご試着いただけますか?」
「あ、はい。」
二人は一緒に出ていくと、静まり返った部屋でまた考え込んでしまった。
しかし、明日から1日部屋でなにもすることなく過ごす彼女のことを考えると、それは致し方ないことかもしれない。
彼女が戻るまで、部屋に持って帰って来た書類を少し読み進めた。