第11章 6日目の色欲
二人に別れを告げて、船が出航するのを見送った。
甲板に出てる二人に手を振り、悪戯に彼女を抱き上げ、見せつけるかのように口付けた。
ハッとしたルルさんがぽこぽこと叩いてきたが、甲板の二人のおどおどした反応が面白かったので、そのままにしておいた。
「ジェイドさん!ひどいです!不意打ちはダメです!」
「じゃあ言ってからなら大丈夫でしたか?」
「…あ!それもだめです!!」
顔を真っ赤にしながら涙目で怒っている彼女をからかいながら城へ戻った。
「おーい、おかえりー。」
入り口の回廊から陛下がこちらに向かってきた。
「ピオニー様、戻りました。」
ルルさんは、しとやかにお辞儀をして今日あったことを楽しそうに話していた。
「陛下のおかげで質問攻めでしたよ。」
「いやいや、事実を言ったまでだろう。」
「え!!!?そんな……」
今にも茹で上げられて食べられそうになっている彼女をさっと後ろに隠し、平静を保ちながら切り出す。
「わざわざお出迎えなんて、よっぽどなご用件ではありませんか?」
「おお、そうだ。キムラスカの二人には内緒で、こっそり頼んでおいた土産だ。キムラスカの隠れ名物だ。」
お洒落な店のロゴの紙袋から出てきたのは、良い香りのするバスジェルだった。
綺麗な小瓶に入っており、小花が液体に揺れている。
「可愛い!」
「何故これが隠れ名物なのですか?」
大体察しはついているが、ルルさんはすっかり見とれているし、取り上げるのはなんとなく釈然としない。
一応確めるように聞いておく。
「一部の貴族が買い占めてるそうで、滅多に市場に出回らねえ。
手に入れるの大変だったらしいからな。」
「そうですか。ルルさん、よかったですねぇ。
香りも良さそうですよ。」
「ピオニー様…、ありがとうございます…!」
「…あんまり礼を言われると、罪悪感を感じるからやめてくれ。」
「…?」
「なんでもねえよ。」
ルルさんの頭をぽんぽんとすると、彼女は恥ずかしそうに陛下を見上げて、鈴のなるような声で返事をした。
罪悪感ねぇ。よく言いますねぇ。
と全力で言いたかったのを我慢し、ルルさんを連れて部屋に戻った。