第8章 5日目
その日、私は少し浮かれて起きた。
とても幸せな気持ちで夢を見れた。
私は、ジェイドさんが好きなんだ……。
確信に変わったら少しだけ気持ちが晴れたのだった。
きっと、向こうにしてみたらペットくらいの感覚なのだろう。
それでも、飽きられるまでは、一緒にいてくださる。
将来、もしジェイドさんに素敵な方が現れたら、そっと身を引こう。
それまではどうか、私をここにいさせてください。
両手を合わせて、そっと空にお願いしてみた。
記憶が途中からない私は、預言とかそういうことはよくわからないけれど、少しだけ信じてみたくなった。
「今日のお約束なのですが、お昼からでも宜しいですか?」
「あ、はい!どうしたのですか?」
「陛下が何か話があるそうで。どうせ下らないことだとは思うのですが。」
「わかりました。私はお散歩してから向かいますね。」
今日は、日用品を完全に揃えて下さるそう。
本格的に城内でもお仕事を頂けないか聞いてみないと、自己嫌悪で死にそうだ…。
ジェイドさんと変装したピオニー様をお見送りしながら、私はお茶をいただいてからゆっくり出掛けた。
グランコクマの城下は、水辺が綺麗で眺めているだけでも楽しく、城を出てから一通り回ったところで、ジェイドさんと御約束した酒場兼食堂に辿り着いた。
(一人で出歩くの、初めてだなあ。)
迷わないように手書きで地図を書いてもらったからか、すんなり着いてしまった。
人が行き交うのをのんびり眺めていると、二人の男性が近づいてきた。
「お嬢さん一人?」
「これからランチ食べるんだけど、一緒にどう?」
「すみません、今、待ち合わせしているところで…。」
いつものように俯かないよう、説明した。
「待ち合わせ~?彼氏?」
「い、いえ!そういう方ではないのですけど!」
「じゃあいいじゃん!来るまで一緒に時間潰してあげるよ!」
「でも、もういらっしゃるので…」
「わかんないよー。お嬢さん可愛いけど騙されやすそうじゃん?そいつの名前は?」
「ジェイドさんです。」
二人は大きな声で笑いはじめて終いには手を叩き会わせた。
「大佐と~?なわけないっしょ!!お嬢さん面白すぎだわー。」
「そうそう、そんな夢より、俺達の方が……。」
そこで丁度、酒場からお二人がいらっしゃった。