第60章 【番外編】パブロフの犬
昔読んだ書籍に面白い実験が載っていた。
犬に餌をあげる前に必ずベルを鳴らす。
それを習慣にするため、毎度の餌の時間には必ずベルを鳴らす。
やがて、犬は、ベルの音を聞くと勝手に餌が出てくる合図だと記憶し、ベルの音を聞くと唾液が分泌されるようになる。
生物の、特に高等な位置にいる哺乳類は、そういった訓練や知識で身につけた条件で反射行動を起こすようになるという。
ルルさんに、私の普段使っている香水を入れたペンダントを渡した。
何日かばかり遠征をする予定の為、寂しがらせないようにと最初は善意のつもりだった。
悪戯心がいつものように沸き起こる。
暇潰しに作った無味無臭の媚薬を少し配合した。
物質の変化は特に見られなかった。
まあまあ成功だろう。
彼女は喜んで受け取り、幸せそうに笑う。
多少の罪悪感はやはりあるが、それを上回る楽しみが1つ出来た。
「行って参ります。」
いつものように小さな少女は駆け寄り、優しくキスをしてくれる。
「気を付けて…」
小瓶から揺れる香りがふわっと漂う。
いつでも私がいるようで安心する、と彼女がまた嬉しそうにする。