第59章 【番外編】犬
「ルルさん、これどうぞ。」
「わあ、素敵なペンダントですね…!」
ハート型の小瓶には液体がゆらゆらと揺れている。
カットが綺麗に入れられたガラスは、まるで宝石みたいに輝いていた。
「特殊な技術で加工しているので、普通のガラスではありえない程輝くんですよ。
つけて差し上げます。」
「ぜひ!」
私の胸元にぶらさがったそれは、とても上品で綺麗だった。
「すごいいい香り…ジェイドさんのコロンですか?」
「よくわかりましたね。」
「爽やかで好きな香りです。」
「遠征でまた寂しい思いをさせては申し訳ないので、せめて胸元にいつも私を思い出して頂けるようにと…。」
ジェイドさんの優しさと心遣いにいつもよりきゅんとする。
「あ、ありがとうございます!大切にしますね…!」
あと少しで泣きそうなのをぐっと堪えて、私はペンダントをまた見て嬉しくて頬が緩んでしまう。
なんだかジェイドさんに抱き締められている時みたいで、とても胸が熱くなって、きゅんと甘酸っぱい気持ちになる。
翌日もその次の日も、私は仕事中にペンダントの香りを楽しんではきゅーんとする気持ちを楽しんだ。
ジェイドさんはしばらくお仕事が詰まっているそうで、夜もなかなか会えなかった。
でもいつも側にいるみたいで安心する。
じわじわと会えない寂しさと、いつも夜にしてくれている激しい愛情表現を思い出すかのような甘い香りに、私は段々と、自分を誤魔化すことが出来なくなってきた。
何日も会っていなくて、身体の奥底が熱くなっていく感覚。
ペンダントの小瓶を開けて、枕元に少しだけ垂らす。
お部屋に香りが満ちて、身体がじゅくじゅくとする。
「ジェイドさん…。」
寂しくて泣きそうになった。
でもお腹の奥は熱くて、触って欲しくて、我慢できなくなって指を這わせた。
下着越しにもわかるぬるっとした感触。
恥ずかしいけれど、指の動きを止めることが出来ず、私は自分の手で少しずつ慰めていく。
「ふぁっ……あっ……」
足りない長さや太さ、あと、彼じゃないもどかしさ。
色々考えていたのにすっかり頭は真っ白になっていつの間にか疲れて眠ってしまった。