第58章 【番外編】その距離は
ジェイドさんは長らく出張で、お会いするのは2週間ぶり近くだった。
帰って来てすぐに抱き締めてくれて、
「寂しかったですか?」
と心配そうに聞いてくれる。
「は、はい…」
ぎゅっと腰に手を回して抱き締め返す。
相変わらずすらっと背の高い彼に、私は腰までしかなく、少し遠く感じるお顔が綺麗に笑う。
久々のジェイドさんの匂いが安心させるのと同時に、鼓動がとくとくと忙しなく鳴った。
「私もですよ。」
屈んで甘くキスをしてくれて、頭も身体も蕩けそうになる。
「ルルさんと久々に二人で過ごしたいです。
どこかに行きましょうか。」
「お疲れではありませんか…?
明日でもいいですよ?」
「すみません、明日も難しくて…。
今の口付けで疲れなんて吹き飛びましたから、行きましょう?」
「はい!」
なんてお優しい方なんだろう、とますますどきどきとしてくる。
好きすぎて一緒にいるだけで幸せで、私は頬を緩ませずにはいられなかった。
いつものように服を選んで髪形も結ってもらって、手を繋ぎながらうきうきと城下へと出た。
フェスが近いのか、町はいつもより賑わっていた。
出店ががやがやと道を覆い尽くしていた。
「わぁ…!」
可愛い小物や飾りがそこかしこに並んでいて、見ているだけでうきうきしてくる。
「明日は1日お祭りで、陛下の護衛なんです。
夜は舞踏会もあるので、そこは一緒に行きましょう。
ドレスも新調しましたし。」
私の知らぬところでまた1着お高い服が増えていると知って、少し驚いた。
「ああ、ヘアアクセサリーを注文しておいたのですが、少し寄って届いたか聞いてみましょう。」
「アクセサリーまで…!いつもありがとうございます…。
何か、お返ししたいのですが…?」
ジェイドさんは一瞬驚いて、にこっと笑う。
「前も言いましたよね?
ルルさんが一つ一つ、私の色に染まっていくのが何より私の幸せなんですよ。」
「…っ!!」
顔が一気に熱くなる。
なんてことをさらっと言うんだろう…!
私の心臓がいくつあっても足りない気さえしてくる。
どきどきとする胸を押さえながら、私たちは近場のアクセサリーショップに足を運んだ。