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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第49章 彼女の追憶


漸くルルさんから寝息が聞こえてきて、起こさないようそっと横にする。
「寝たか…。」
寝室の外にしばらくあった気配が話しかけてきた。
「なんでしょうか?」
「そいつ、レプリカなんだな…。」
「…ネフリーですか?」
「…ああ。結局調べることにはなったがな。
大変だったぜ。お前の本一冊一冊、ここ十数年の新聞一冊一冊…。」
雷がまた大きく鳴った。
近くに落ちたかもしれない。地響きも少し聞こえる。
「すみません、いずれはお話する予定でしたが…」
「嘘つけ。」
「バレましたか。」
「何年の付き合いだと思ってるんだ。」
ふふっと笑いが漏れた。
「漸く完成したレプリカ、か。
ネフリーが見覚えがあるって書いてあった。
新聞に載ったのを見てたんだろう。」
「そこからわかりましたか。」
「まあ。」
陛下はそう呟くと、ソファに座った。
「一応成功例ではあるのですが…彼女は…生殖機能はありません。
そして人類でもないので、このままいてもいずれ淘汰されたでしょう。
私自身、処分を考えていましたが。
彼女だけは殺せませんでした。
初めて会った時、再会した時、共に共通して思ったのが、強く惹かれるんです。
興味が沸いて仕方がないと言いますか……。」
考えながら言葉を選ぶ。
陛下が前に言ってくれた一目惚れ、これこそ正解かもしれない。
「ルルさんにまた会えて、そしてこうして繋がれて、とても幸せです。」
「…わかった。そのままでいい。」
「いつか彼女が思い出すまで、私は一緒にいます。」
陛下は黙って部屋を出た。
一通り、自分の中の罪悪感を打ち明けられる人が出来て、少しほっとする。
目を覚まさないルルさんの顔が綺麗で、そっと口づけてから隣に横になった。
指の先、髪の1本1本も、全て自分の物になった安心感。
薬指に光る指輪ごと指を絡め、ゆっくりと眠った。
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