第48章 追憶
雨が降っている。
お洗濯は城内で行われ、私はその後の床掃除をしていた。
音機関を使うお洗濯は比較的に楽でびっくりする。
それが終わったら解散となった。
薄暗い城内はいつもより雰囲気がおどろおどろしてて、一人で歩くのは怖かった。
お昼過ぎて少しだというのに、灯りを付けないと見えない回廊もあった。
自分のお部屋に戻るのも怖くて一苦労。
ジェイドさんはお仕事でしばらくお城を離れるらしくて、寂しいと思いつつ、前に買ってくれたお菓子の本を読みながら帰ってくるまでに何を作れるようにしようかわくわくしていた。
雷がゴロゴロと鳴り始めて、夕方にはお部屋も灯りを付けないと真っ暗で何も見えない。
大きな音がして、私は思わず変な声を出す。
私は、雷がとても苦手だ……。
前はジェイドさんがお休みだったから乗り切れた。
しかし今日はこの広い部屋に一人……。
もし夜もお戻りでないとなれば、ここで一人で寝るしかない…。
それまでに雷雲が通りすぎてくれれば良いが……。
「うぇぇぇ……どうしよう……。」
カーテンを閉めて灯りを付けたけれども、外からの、
ゴロゴロー!!
という大きな音に毎回吃驚してしまう。
しかもかなり近い…!
私はジェイドさんとの約束を破って、隣室にいるピオニー様を訪ねた。
「ぴ、ぴおにーさま……忙しいですか…?
邪魔はしないので…ここにいていいですか?」
「ああ。」
短く素っ気ない返事が返ってきて、急に申し訳なくなってくる。
「あ、やっぱり……かえりま…」
「いいって。入れよ。」
「す、すみません…。」
私は深く頭を下げながら入った。
代わりに、まだ手付かずだったティーワゴンで紅茶を入れて、邪魔にならないところに置いた。
ピオニー様は一生懸命、本に囲まれて調べものをしているようだった。
そのなかで私の一連の仕草を見て、ありがとう、と一声かけてくれた。
こんなに真面目なピオニー様をあまり見たことがなかったので、少し驚く。
(なんて、失礼かな…。)
床にあったクッションに腰掛け、本の続きを読んだ。