第46章 旅行3日目
ネフリーに手紙を渡された。
陛下に渡すようにと言われた。
相変わらずで少し安心する。
中身は特に気になってはいなかったが、どうせ後から内容を陛下から聞かされるだろうと。
ルルさんをしつこく紹介して帰ることにした。
いずれきちんと向き合ってそういう形になれれば、という欲求からだけかもしれない。
形だけでもそう取れればとは思っている。
私の想いが多少なり通じてか、船内のウェディングプランのお店でルルさんが足を止めた。
彼女は飾ってあるドレスを見て、顔に、
「おこがましい」
と書いてあった。
相変わらず私に対して何を遠慮しているのか訳がわからず、もやもやとする。
彼女は出逢った当初からずっと私に何かしらの壁を感じているのが気になる。
大したことはしていないし、ただ欲望のままに生き、無駄に年を重ね、最近漸く大切な物に気付けたという哀れな年寄りなのに。
あまりにももやもやしてしまい、勝手に店に入り、勝手に彼女の見ているドレスを注文する。
彼女は感付いたのか慌てて私を止めた。
もう無理矢理にでも進めないと、私達は一生このまま立ち止まる気がしてならなかった。
正式なプロポーズなんて今更出来ないが、形だけでもそうなりたいという私の気持ちが伝わると嬉しい。
ルルさんは、本当に自分でいいのか聞いてきた。
当たり前のことを不思議そうに聞いてくる熱のこもった瞳は、淫魔のように激しく私を誘惑してくる。
「当たり前じゃないですか。
ルルさんは私ではイヤなのですか?」
「と、とんでもないです。
私にはこの先もジェイドさんしか考えられません。」
真っ直ぐ向けられた瞳は、私を幸せにすると共に、私らしくない恥じらいを心から産み出していく。
「私もですよ。」
と答えるのが精一杯で、つい自分の歩く速さで立ち去ろうとしてしまった。
一生懸命自分の背中を追う小さな少女の足音が後ろから聞こえた。