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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第6章 4日目


目を覚ますと、私はベッドに横たわっていた。
また、なんてことを……。
頭が沸騰するくらいに熱くなって、急いでガウンを羽織って、洗面台で顔を洗った。
「…恩返しなのは、わかってるんだけど……。」
鏡を見ながら思わず溢れた。
命の恩人に暮らしまで用意してもらっているのに、私はこれくらいのことしか出来ないのに。
もやもやとした気持ちで気分が沈んでいく。
なんとも言いがたい不満が私の周りをぐるぐると渦巻いている。
「どうされました?」
振り返ると、ジェイドさんが既に身なりを整えて立っていた。
「あ、おはようございます…、なんでもないです。」
なんとなく気まずくて、私はその場から逃げるように去った。
(なんでもやもやするんだろう…!)
「ルルさん、紅茶でよろしいですか?」
アールグレイの優しい香りがリビングから漂ってきて、私はなんとも言えない表情をしながら頷いた。
「……」
食器が静かに音を立てる。
その日の朝食は、フルーツのクレープだった。
いつもは美味しいのに、自分の心情がわからなくて、味が全然しなかった。
「体調でも悪いのですか?」
心配したジェイドさんが、私の後ろに回り込んで首と額に手を宛てた。
ひんやりした綺麗な指先に驚いたが、なんとなく、ぎこちない手つきだったからか、拒否することが出来なかった。
「熱があるわけではないですけどねぇ。」
「具合は、特には……。」
「それはよかったです。」
またいつものように優しく笑って、自分の席に着かれた。
「何かあったらいつでも言ってくださいね。」
「…ありがとう、ございます……。」
言いたくても言葉にならない。
私はどうしたいの。
私はどうなりたいの。
離れた指先が数分経っても尚、名残惜しい。
ため息が少し熱かった。
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