第38章 62日目
ジェイドさんは確かに心当たりがないという表情をしている。
「……あ。」
「?」
「すみません、あまりにもルルさんを悪く言うので一回脅かしたんです。
その時に、その方の髪を少し直すのに顔を寄せたんです。」
迂闊でした、とジェイドさんは丁寧に謝っていた。
「え、私の、勘違い?」
そうだとわかったら安心したのか、私はぽろぽろとまた泣いてしまった。
「よ、よかっ……よかったぁ……!」
「それで怒っていらしたんですね。」
ジェイドさんは私の真似をしながら、よかったと冗談混じりの猫なで声で言った。
それがちょっと面白くて笑ってしまった。
「さぁ、勘違いで私に悪態をついた罰を受けなくてはいけませんねぇ。」
「…え!?」
ざばっとバスタブから抱っこで出されると、ふわふわのバスタオルに巻かれて、にこにこと楽しそうに笑うジェイドさんに組み敷かれた。
「私も色々ありましたので、たっぷり、楽しませて頂きます。」
指輪と同じ紅が、私の目の前にちらついた。