第35章 60日目の危機
「ルルさん、貴女は……」
「ジェイドさんも、他の大人の女性がいいんでしょ?」
「はい?」
「私みたいな幼稚な人より、魅力ある人の方がいいんでしょ?
いいですよ。無理に一緒にいなくても。」
私と視線を合わせようと一切しないルルさんが怒ったように言う。
「私には、貴女だけで…」
「こっ、この前の、大きい胸の女性のほうがいいと思いますよ!」
語尾を強めて更に言う。
「いつも上手いこと言って…!本当は私なんて飽き飽きしてらっしゃるんでしょうっ!?」
「ルルさん…?」
彼女はぐっと歯を食い縛ると、そのまま執務室を走って出た。
城下で会った女性のことだろうか。
話していたところだけを見ていたのではないのか。
色んな疑問が渦を巻いていく。
引き止めたいのにあそこまで拒絶されてしまっては…。
椅子に座り直し、呆然と天井を見上げる。
彼女を傷付けない為にしてきたことが全て逆になってしまった。
なんとかならないだろうかと頭を回転させるが、もやもやとした渦が消えずにある。
彼女の怒りと悲しみの涙は、私にはあまりにも重かった。