第32章 59日目
「す、すみません…汚してないですよね?」
「大丈夫ですよ。貴女の物を汚いだなんて思いませんから。」
「そ!そういう問題じゃないです!」
ジェイドさんは、夕方から夜にかけて、お祝いの席にご招待されたそうで、朝からその準備をしていたのだと教えてくれた。
ピオニー様は相変わらず、
「あー、うん、それそれ。」
という曖昧な言葉を繰り返してて、この方は凄くイイ人なのだろうなと思った。
いつものように玄関先でお見送りをして、ピオニー様のご厚意で、そのまま一緒に夕食をいただいた。
帰りが何時になるかわからないということだったけれど、私はブウサギと遊びながら待つことにした。
ジェイドさんがピオニー様のお部屋に戻ると、もうお風呂に入ってきたようだった。
いつもと違うことに少し違和感を覚える。
においが、と私がさっき言っていたことを言っていたから、気にしてくれたのかなと思った。
お部屋に先に戻ると、少しだけ香水の匂いがした。
お祝いの会場でつけられてしまったのか。
なんとなくとしかない不安、昨日の不安、二つ重なってしまって、お部屋に戻ったジェイドさんには何も聞くことが出来なかった。