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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第32章 59日目


その日はいつもの私の日常とは全然違っていた。
私はメイドさんのお仕事は元々お休みだったのだけれど、お城はいつもより忙しそうだった。
お客様の出入りも多くて、あちこちに物がどんどん増えていく。
ピオニー様に朝御飯を誘われて、少しだけ聞いてみたけれど、
「あー、うん、まー。」
と気の抜けた答えを繰り返すばかりだった。
言いにくいのかな、ということで一応腑に落とした。
それでもなんとも言えない気持ちではあった。
お昼過ぎくらいに、やっぱり変だと思ったのは、大きな車がお城に着いていて、美味しそうなご飯を大量に運んでいた。
書斎からお部屋に戻ろうとした時に少しだけ見えた。
そして、お部屋に戻ると、いつもと全然違う雰囲気のジェイドさんがいた。
黒い燕尾服に身を包み、長い綺麗な髪を束ねて、前髪も後ろに固めて、なんというか、色気がそこかしこに出ていて、息を止めて見てしまった。
「どうされました?」
「………あっ!いえ……。」
声を掛けられて少しあとに漸くその声が私に届いた。
そのくらい綺麗でぼーっとしてしまった。
くすりと笑われると、いつも以上にどきどきと胸が鳴ってしまう。
「そんな反応をされてしまいますと、自分にすら妬けますねぇ。」
「え!?その、慣れなくて、つい…。」
ジェイドさんが一歩近付くと私は一歩下がる。
「そんなに雰囲気が違いますか?」
「は、はい……。」
服装もだけれど、髪型が違うだけでこんなにドキドキするとは自分でも驚いた。
「どうですか?いつもの私と、今日の私と。」
また一歩一歩と近付かれて、あっという間に壁に追い込まれる。
「なにが、ですか?」
「どちらがルルさんのお好みですか?
こちらがよろしいようでしたら、明日から毎日…」
「それは……いやです……。」
またくすりと笑われて、手首を壁に縫い付けられる。
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