第31章 58日目の緊迫
いつもと同じような午前。
私は次の任務までの計画を練ったり、指導したり、同じような日々を過ごしていた。
いつもより少し違う客が来たが、昨日私達の行為を覗き見していた変態屋敷主ではないか。
にこにこしながら話しかけに行こうとしたが、王室へ向かっているのを見て、一旦止めておくことにした。
(後で嫌み言われるのも面倒ですし……。)
なんて、考えていたのだが、それどころではなかった。
「ジェイド、悪い……。」
陛下に呼び出されるといつもより大分しょんぼりしていた。
「あのジジィはお前の言うとおり、あの時に始末しておけばよかった。」
「写真は処分出来ませんでしたか。」
「しかも。それで脅しをかけてきた。」
前回のシャッター音はそういうことだったのか、と漸く辻褄が合った。
杖に仕掛けていたであろう小さなカメラは、私達の行為を捕らえて、その後何かしらの要件を呑むかバラ蒔かれるかということだろう。
「予測が簡単に付いてしまって、全く面白くありませんねぇ。」
ここまでの感想はこの一言に尽きる。
「要件は、あのジジィの娘との見合いだ。しかも破談は無し。」
「では、バラ蒔かれましょう。」
「お前は……そう言うと思った……。」
はぁーとため息を陛下につかれる。
「まあ、そう言っといてやる。」
「宜しくお願い致します。」
礼をして振り向き、王室を出る。
この話がルルさんの耳に入っていないといいのだが。
これだけが不安だった。
断っても断らなくても、結果的にルルさんは傷つくだろう。
しかし、私は尚も、他の女性と二人きりでそういう話をすることも気が引けた。
それだけ、彼女との時間は大切でかけがえのない物だった。