第29章 57日目の予兆
「見せ付けて、ルルさんは誰のものか、しっかり教えて差し上げませんといけませんねぇ。」
そう、例えば、戸の外にいる何人か。
一人は陛下か。
もう何人かいるが気配を隠しきれていない様子に思わず笑いたくなるのを堪える。
ルルさんが息も絶え絶えに悶える姿を奴らは見ている。
可愛らしい姿を見せたくないという気持ちも勿論あるが、それ以上に見せ付ける悦びが超える。
余裕がない彼女は扉の隙間から見ている気配に気付いてはいない。
扉の隙間がキラリと何か光る。
なんの道具だろうか?
部外者が一人いるのはわかったが、彼が持っているのだろうか?
手前にいた兵士は限界を迎えたのか、前屈みで走り去る。
後で全力で茶化しに行こうとひっそり心に決め、口端を思わず吊り上げた。
陛下は、呆れた顔でこちらを見ていた。
目で、一緒にいる男は誰かと聞く。
「ルルの元の雇い主。」
「ああ、なるほど……。」
目配せで返事をする。
お互い長い付き合いのせいか、なんとなく言いたいことがわかった。