第2章 初恋(木兎光太郎)
『…俺の彼女になって、唯』
「はい、喜んで」
『おまえ居酒屋の返事じゃねぇんだから』
「それより先輩離してください」
『え、なんで』
「ここ門ですみんな見てます」
『いいじゃんそんなの、
唯は俺だけ見てて』
「そこでカッコつけたって無駄です」
そう言って振り払って、
「…でも、大好きです」
と小声で囁いて、走ってその場を後にした。
だから、木兎がひとり、いつものように
『ヘイヘイヘーイ!やっぱり俺最強!!!』
と叫んでいたら、登校してきた赤葦に
冷たい目で見られた、なんてことを
私は知らない。
(完)