第18章 執着
クローリー
「君はちょっと弱すぎるよ」
ようやく紙を下ろして優ちゃんの方へ視線を向けたお兄ちゃん。
その顔には呆れが浮かんでいた。
クローリー
「せっかくの速さに技術が追いついてない。剣術の鍛錬を積むだけでもっと強くなれる」
お兄ちゃんが他人へ珍しくアドバイスをしたのだが、その言葉が優ちゃんに火をつける。
優一郎
「おりゃ!!」
飛んで刀を引き抜くと、またお兄ちゃんへと斬り掛かった。
クローリー
「ほら、動きに無駄が多い」
不意打ちの攻撃だったが、お兄ちゃんはあっさり剣で受け流している。
優一郎
「お前が強すぎるんだよ!」
流石の優ちゃんでも諦めたらしく、刀を鞘に収めた。
それを見てお兄ちゃんも剣をしまう。
「確かに優ちゃんの言う通りかもね」
優一郎
「お、来たのか」
これ以上斬り合う事がなさそうなのを確認してから2人へ声をかけた。
反応を見る限りお兄ちゃんは気づいていたが、優ちゃんは今来たと思っているようだ。
クローリー
「何が言う通り?」
「お兄ちゃんが強すぎるって事」
優一郎
「だよな!」
私が同意したからか、優ちゃんは満面の笑みをお兄ちゃんに向ける。
そして問い詰め始めた。
優一郎
「お前は剣の修行したのかよ」
クローリー
「まあねぇ」
優一郎
「吸血鬼なのに?」
クローリー
「人間の頃にしたんだよ」