第13章 仕置【R-18】
「幸い、公務もそこまで立て込んでいません。
今日は私一人でも十分こなせますから、もう少し部屋で眠るといいでしょう」
ジルはイリアの髪をそっとかきあげ、優しく微笑みかけた。
「……はい、じゃあそうします」
満足そうにうなづくと
ジルは執務机につき
書類に目を落とし始めた。
「……ジル?」
「はい?」
扉に手を掛けてイリアが言う。
「……ジルは…その、疲れていないのですか?」
少し顔を赤くしたイリアが俯きながら尋ねた。
「あの程度では次の日の公務には全くさし障りありませんよ」
ジルは
少し意地悪な瞳でイリアに告げた。
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「ネープルズの、あの星詠みの孫が、ウィスタリアの王宮で国政に携わっているというのは本当なのか」
ドレナ国境付近
ウィスタリア国エドガー伯爵領
領主のエドガーは
ドレナと結託し、ウィスタリア国の転覆を狙っていた。
ネープルズの王宮に仕える
老齢の星詠み師は
その星詠みの力で
国の農業を導き
豊作になる作物を毎年予測し指南している。
そのため
その農業を中心に
ここ数年で一気に国が潤い始めたのだ。
国として公にしてはいないものの
ネープルズに星詠み師が仕えていることは
周知の事実でもあった。
「その女をこちらで利用すれば、ウィスタリアなど簡単に手に入ります」
エドガーはドレナ国王に助言する。
「何も、プリンセス反対派などをたきつけずとも、確実に手中に入るというわけだな?」
「その通りです」
「…して、策はあるのか」
「お任せください」
エドガーはドレナ国王に深々と頭を下げ、口角を上げた。