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【イケメン王宮】星の導きのままに。

第9章 別邸




自分の身に起きた感覚全てを
イリアは疑った。


まさか。



ずっと焦がれていた人の唇が
優しく重なっている。

肩は、その大きな手で優しく抱かれ
深紫の髪が、僅かにイリアの顔をかすめた。


「………っ」


やがて唇が離れ

深紫の瞳が、
優しく愛おしげに向けられる。

「……王宮で迷っていた貴女を見かけた時」

ジルが言葉を紡ぎ始めた。

「プリンセス候補として、申し分ないと思いました」

「……え、そんなまさか」

「えぇ、本当ですよ」

優しい笑みが向けられる。

「しかし貴女を選ぶことはできませんでした……。
教育係とプリンセスは、決して結ばれてはならないのです」

ジルは目線を落とし、そっとイリアの手に自分の手を重ねる。

「選定会が終われば、二度と会うことはないということも分かっていました。
でも……結ばれることのないままずっとそばにいるよりも、奇跡が起きることに掛けたかったのです」

「ジル様……?」

重ねられた手が、ぎゅっと握られる。


「貴女が……再び私の前に現れてくれたことを
そして、こうしてそばにいて下さる奇跡を……
私は信じたかったのです」

ジルの瞳は、まっすぐイリアに向けられた。



「貴女を……愛しています、イリア」



胸の奥の鼓動が
大きく打つ。

全身の血が
一瞬にして騒ぎ立てるような。



「……うそ…………」



嘘ではないことは
その瞳を見れば分かりきったことだった。

それでも

今起きたこの現実が



………このどうしようもない奇跡が

そう呟く以外
させてくれなかった。



目が再びかすみ
前が見えなくなる。

瞬きをするたびに
大粒の涙が、頬を伝う。



その涙を見て、くすりと笑いながらジルは指先で拭った。

「………困らせてしまいましたか?」

「……そ…んなっ……」

言葉がうまく出てこない。

「申し訳ありません……どうしても、貴女に知って欲しくなってしまいました」

ジルは自嘲気味の笑みを浮かべた。


「ジ…ジル様…」


イリアはジルの腕をつかむと
うつむくジルの唇へ自分の唇をそっと重ねた。


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