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【イケメン王宮】星の導きのままに。

第7章 宮廷星詠み師



「……俺、もう戻るから。紅茶、飲みたかったらテキトーにやって」

アランはそのまま立ち上がると、目線を合わせることなく去ろうとした。

「あ、ありがとう…」

答えることなく、アランは宿舎の方へ向かっていった。



まだ温かさの残る紅茶を口にしながら

イリアは再び空を仰いだ。










Jill side----




公務の立て込んでいない日に
時計塔の屋上へ上がり

真剣に星を見つめるイリアを見守るのが

いつの間にか
ジルの日課になってしまっていた。



時折声をかけて一緒に星を眺めたりしたが
毎日では邪魔になってしまうと思い

それでも彼女のことがどうしても気になり
姿を確認することをやめられずにいた。



(あれ…今日は……)


イリアの姿はそこになかった。

(おかしいですね…今日は休んでしまったのでしょうか)

星詠みが出来ないほど疲れさせてしまったのだとしたら…悪いことをしてしまったのかもしれない。

(明日は少し依頼する量を減らしましょう)

ジルがそんなことを考えながら、時計塔の上からの景色を一通り眺めて戻ろうとすると


「……ん」

(あれは)


厩舎の近く

馬術訓練場の方へと

灯りが移動していた。



暗闇の中、目を凝らすと
2つの人影が見える。


(あれは…アラン殿とイリア)


二人が何をしているのか、何を話しているのかまでは当然わからないが

とにかくこの時間に二人きりで
誰もいないところへ向かっているのは事実だった。


(いったい…どうして)


ジルは二人から視線を外すことができずにいた。

程なくしてアランはその場から去っていったが、すぐに戻ってくると

しばらく談笑しているように見えた。


(……私は、何をしているのでしょうね)


声をかけられずに毎晩姿を見守り
違う男性と会う姿を目で追い

胸の奥に芽生えた嫉妬心は
抑えの効かない獣のように
ジルの中で大きくなっていく。



(私としたことが……。選定会のあの日から…貴女に心を乱されてばかりです)



それでも
今すぐイリアの元へ駆けつける勇気は
まだジルにはなかった。


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