第5章 再会
Jill side----
(つくづく自分のずるさに嫌気がさしますね…)
揺られる馬車の中でジルは一人思案した。
(国王陛下の許可も取っていませんが……)
窓の外からは、まだ眠らない城下の喧騒が聞こえる。
(酔ったフリをして女性に触れるなど……)
イリアの頬は、とても火照っていた。
それがお酒のせいなのか、自分のせいなのかは分かりかねたが
ジルは普段なら絶対にしないような軽率な行動を少し悔んだ。
(王宮に招いておきながら…あのようなことを…)
イリアの微笑み、醸し出される色香…
触れることを止められなかった。
「………」
ジルはもう認めざるを得なかった。
自分の気持ちに。
選定会のあの日
初めて会った時から
ずっと惹かれていたことを。
(まさか…自分がこんな気持ちになるとは、思っても見ませんでした)
先程までイリアが座っていた向かい側の席を見つめ
ジルは胸の奥に生まれた新しい痛みをそっと抱え込んでいた。