第3章 未来予知
未来予知で見たビジョンの話をし終わる頃には
東の空からすっかり日が昇っていた。
「それ…本当に当たるのかよ」
今まで星詠みや未来予知の結果を情報提供することはなかったため、シドはにわかに信じがたいといった顔をしていた。
「自分で言うのもなんだけど、当たる…」
面倒そうな、やや苛立ちを含んだ顔をして
シドは空を見上げた。
「……ったく、服の色じゃなくて名前はわかんねーのかよ」
「それは…ごめん」
「大体緑の服なんてよくある色だろうが…」
自分でもなぜこんなビジョンが見えてしまうのか
イリアは改めて自分の能力を呪った。
「とりあえず、俺も今回招いてる貴族の何人か、素性調査をジルから頼まれてた」
「ジル、様に?」
「ああ…俺が調べた人間の中には怪しいやつはいねぇ。だとしたらそれ以外の人間ってことになる…ジルにはそれくらいの忠告程度にしか言えねえぞ?」
確かにそうだ。
当日、緑の服の男がプリンセスを襲う、などという根拠のない事前情報、どう説明したら信じてもらえるのかイリアにも見当がつかない。
「ま、あとは俺が直接現場に出向くか、だ」
「え?そんなことできるの?」
王宮に出入りする情報屋ということは知っていたが、パーティに参加できるほどの力もあるのか…
確かにシドからは庶民とは思えない所作や知識をたまに垣間見ることができる。
訝しげな顔をするイリアを、一瞥してシドは立ち上がった。
「さて、そろそろ行くぞ」
シドはイリアに手を差し出す。
イリアが手を取ると、思いきり引っ張られ、
そのままシドの胸の中に抱きとめられた。
「シ、シド……!」
シドはイリアの耳元で、掠れた声で囁く。
「……俺がさっきので足りると思うか?」
「えっ……」
「…俺の部屋来い。続き、するぞ」
「………えぇっ?」
シドはそのまま、すっかり明るくなった朝の中
意地悪な笑みをたたえて歩き始めた。