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【イケメン王宮】星の導きのままに。

第3章 未来予知






プリンセス選定会からひと月が経とうとしていた。

ウィスタリアはもうすぐ本格的な夏を迎える。



少し日が伸び、夕暮れ時の城下の人出もわずかに増える。

人々の行き交う声は、夏に向かうに連れて高揚していくようにも感じ取れた。


遅い時間まで出歩く人が増えると
星を詠んでほしい、占いたいという人も増える。



このところイリアは鑑定の仕事が立て込み
そのまま真夜中に天球図を見て、明け方に眠る生活が続いていた。


シドにもあれから会っておらず
仕事の依頼はおろか、姿さえも見かけない。



選定会の出来事は
イリアにとっては夢を見ていたかのようなおぼろげなものになっていた。




王宮の廊下、庭、広間…

そして出会った人々…



深い紫色の瞳。




低く澄んだ静かな声。





ジルのことはなぜかはっきりと思い出すことができた。


会えるはずもないのに、
夜明け前や日暮れ時の淡い空のコントラストを見上げるたび

空の何処かに必ず

ジルの瞳と同じ色が見つかる。




いつからか、ジルと同じ色を空の中で追うのが

イリアの日課になっていた。









城下町から少し離れた小高い丘の上は

周りを遮るものが何もなく

星を観察するにはうってつけの場所だった。


イリアはいつもその丘の上で

星を詠んでいた。




「…なんか今日は…陰って見えるな…」

ここのところ忙しかったせいか、目が僅かに霞む。

何度か目をこすりながら
イリアは草原に寝転がって観察を始めた。




鑑定や雑務に追われていたせいで
今夜はスタートが遅れてしまった。

すべての空を詠む前に
東の空が淡く紫色に白みはじめる。



(今日はダメだな…うまく詠めない)



少し眠くなる意識をつなぎとめながら
イリアはいつものように
ジルの瞳の色を空の中に見ようとした。





その時だった。





突然目の前から色が失われ
白黒の世界が広がった。


(えっ)


いつもの未来予知とは少し違う感覚に
イリアは少し戸惑った。


(なんか…めまいが……)


すると

白黒の空がぐにゃりと歪み
全く別の光景が広がった。



(……ここは………)

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