第16章 婚姻式
ウィスタリアの春。
ピンクや黄色、赤や青
色とりどりの花が
王宮の庭を美しく彩る。
朝からジルは
城中を駆け回っていた。
「あ、レオ」
廊下でレオに出くわす。
レオも同じように慌てた様子だ。
「会場はもう準備できていますか?」
「うん、オッケー。今から来賓の誘導をユーリにしてもらうよ?」
「お願いします…外は?」
「アランが対応してるはず」
一瞬のうちに必要な会話を交わし、お互い別の方へ走っていく。
中庭には
暖かな朝の日差しが射し込む。
今日は
プリンセスとルイの
婚姻式だ。
プリンセスの私室。
真っ白なレースに沢山のパールが散りばめられた
Aラインのウェディングドレス。
肩袖にも美しい刺繍のレースが施され
上品なデザインになっている。
光り輝くティアラにベールがかけられているが
ベール越しにもプリンセスは
輝かんばかりの美しさだった。
「本当に私が介添え人で良かったんですか?」
「もちろん…イリアにいてもらえたら、安心するし緊張もほぐれるから」
プリンセスは鏡越しに立つイリアに微笑みながら言った。
「……って、イリア綺麗すぎ…私負けちゃいそう」
「そ、それはないです」
イリアはブルネットの髪を後ろにきれいにまとめ上げ、紫色の石の装飾がされた髪留めをつけていた。
少し紫を帯びたトワイライトブルーのシンプルなドレスを纏っている。
「イリア」
「はい」
プリンセスはゆっくり立ち上がって振り返り
イリアに向き合った。
「私、あなたがいてくれてよかった。同じ城下の庶民出身で、同じくらいの歳の女性がいてくれて…。
これからも、よろしくね」
「いえ…私の方こそ。プリンセスがあの時の会議で助けて下さったから今こうしていられるのです」
「いえあれは……ほとんどシドのおかげよ」
シドはあれ以来王宮に姿を現していない。
「今日も一応招待はしたけど…ルイと仲悪いからどうかな」
プリンセスが少し苦笑いを浮かべる。
その時
時計の針が予定の時刻をさしていた。
「プリンセス、そろそろ行きましょう」
イリアはプリンセスの手を取り
廊下へと出た。