第12章 宴の誘い
自分の前に萩を横抱きに乗せ右手に手綱、左手で腰を抱き家康は少しでも長く二人きりでいたいとのんびりと馬を走らせていた
(春日山城か・・・)
はぁっとこれからの事を考え家康は溜息を吐いた
萩「どうしたの家康?」
心配そうに家康を見上げる
家康「何でもないよ」
(佐助は幼馴染、幸村は萩に凄まれてたし手は出さないかな?問題は謙信と信玄か・・・)
眉間に皺を寄せ溜息を吐きながら考え事をする家康に
そっと手を伸ばし頬に触る
萩「ねえさっきから溜息ばかりしてるよ?私と二人で出かけるのは嫌?」
上目遣いに小首を傾げて聞く萩
(可愛い・・・・・)
家康「・・・嫌じゃない」
顔をほんのり赤く染めボソッと呟くと萩は満面の笑みで微笑む
(ほんと何なのこの可愛い生き物は)
おでこにチュッと軽く口づけを落とすと萩は真っ赤になった
萩「なっ!?」
家康「可愛い萩が悪い」
萩「えっ?ど、どうしたの?何か何時もの家康と違う・・・」
真っ赤な顔をしてオロオロする萩
(はぁ・・・謙信達に萩を見せたくないけど宴だから仕方ないか、せめて何か牽制できれば・・・あっそうだ)
家康「萩、赤い花は消えちゃった?」
萩「赤い花?」
訳が分からずキョトンとする萩の二の腕をツンツンっと突くと思い出したのか口をパクパクさせる
萩「き、昨日の今日で消えるわけ無いでしょ!?」
(まだあるみたいだな。ああでも、萩の白い腕を見せるわけにはいかないか・・・
じゃあ見える所に付け直そう、何処がいい?)
ジッと萩を見つめてまず手を持ち上げる
(手首だとただぶつけただけと思われるか)
手を下ろし徐に萩の髪を後ろに流す
(項じゃ殆ど見えない、じゃあやっぱり・・・)
萩「???」
スッと顎を持ち上げ襟元を少し開き首筋に顔を埋めた
チュッと吸い上げ満足そうに微笑み襟を直す
萩「えっ何?」
家康「内緒、ほら春日山城が見えてきたよ」
城を見る為振り向いた萩の首には家康が今しがた付けた赤い花が咲いていた