第11章 謹慎 2
萩「うーんよく寝た・・・ってあれ?」
萩が眠りについて約一刻程
目が覚めた萩は周りを見回す
信長「起きたか萩、丁度いいこっちへ来い」
襖の向こうから信長の声が聞こえた
萩「はーい、今行きます」
カラッと襖を開くと部屋には大量の扇子が並べられていた
萩「うわぁー凄い!?こんなに沢山どうしたの?」
?「姫様が扇子をご所望とお伺いいたしまして参上いたしました」
声がした方を向けば商人が扇子を並べている
信長「甲斐のトラの扇子は捨てる、好きな物を選べ」
いつの間に取ったのか萩が信玄に買ってもらった扇子をヒラヒラさせると天主から張り出した板張りの床に立ち無造作に投げ捨てた
萩「扇子に罪は無いのにな・・・」
はぁっと溜息を吐き沢山の扇子を見つめる
萩「うーん、どれにしようかな」
端から順に扇子を見て行く
緑、青、水色、紫、黄色・・・・・
萩「あっこれ何だか兄様みたい」
黒地で縁を赤く染め、中央に金色の糸で木瓜(もっこう)の刺繍が入っている
店主「さすが姫様ですね。これは信長様から注文を受けお作りした物でございます」
萩「織田家の家紋の木瓜紋ね、兄様私これが良い」
信長「そうか、ではそれを貰おう」
店主「お買い上げありがとうございます
また何かありましたらぜひ、お声おかけ下さいませ」
萩は信長に買って貰った扇子を嬉しそうに見つめる
信長「気に入ったか?」
萩「うん、そうだ!久しぶりに舞でもしようかな?」
信長「舞を見るのは萩がこの城に来た日以来か」
萩は右手だけで扇子を持ち、親骨をひとつ開く
次に、親骨をしっかり持ち、勢いよく下に振り下ろし、一気に開いた
信長「ほぉ、美しいな」
舞終わった萩が信長に近づき微笑む
信長「良い物を見せて貰った褒美だ」
扇子を持っていない方の手を掬い上げ指先にチュッと口づけを落とす
(近親者でも婚姻は可能だ。萩は子孫と言えど血は随分薄い、お前は俺の物になる気は無いか?)
心の中でそんな事を考える信長だった