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連れ立って歩く 其の四 和合編 ー干柿鬼鮫ー

第11章 気掛かり


そういう藻裾の秘密を、デイダラは守ってやるべきだと思った。
誰にでも傷はある。
野生の動物のように体を縮め、身を隠し、じっと癒やしたい傷が。

卓の上のくしゃくしゃの紙にぞんざいな地図を書き付け、デイダラは顔を上げてそれを鬼鮫に突き付けた。

「ここに旦那がいるか、牡蠣殻がいるか、そりゃ保証の限りじゃねえ。宛が外れてもウダウダ言うんじゃねえぞ、うん?」

受け取った鬼鮫は詰まらなさそうにそれを懐に収める。

「わざわざそんな事を言いに来る程、私はあなたを好いちゃいませんよ。安心しなさい」

「は。頼むぜ、爺さん」

「…いい加減にしないと削りますよ」

「…オメェなぁ。少しは感謝しろよ。俺は言い告げ口は嫌いなんだぞ。それをわざわざ…」

「ああ、そうですか。それはどうも。…恩に着ますよ、デイダラ」

ほんの一瞬、真顔でデイダラを見やって鬼鮫は踵を返した。

「居なくても暴れんなよ、おい」

背中に声をかけたデイダラへ、鬼鮫が振り返る。

「まさか。それならばまた探すだけですよ」

薄笑いが嫌味ではない。一時ポカンとしたデイダラを残し、鬼鮫は長い外套の裾を翻して出て行った。

「…ま、なら探しゃいいさ。うん」

したいようにすればいい。
仕様もない連中が集まった暁だ。各々好きにすればいい。

前よりゃちっと、付き合い易くなったぜ、鬼鮫。マシになったってヤツだな。うん。

隙間風が吹き込んで、伽羅が匂った。

アンタが杏可也さんを彫り出すなら、アタシもそいつを見てみてぇな。

そんな便りと一緒に香木を送って来た藻裾。

デイダラは小刀を手に卓に座り直した。

一心に香木を彫り出す手に、今ある気掛かりが表れる事はなかった。














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