第4章 1冊の本
水曜日、何故か急に会社から有給を消化するように言われ、用事も無く、たまたま取った平日休み。彼氏もいない女一人に何をして過ごせっていうんだ。
友達も休みなわけがないこの日、とりあえず外に出てみることにした。(休みの日に誘える友達がいないわけではないし、派手な方ではないけど、決してネクラじゃないというアピールをしています、私。)
ふと通りがかった本屋さんに貼られているポスターに目が止まった。
『明道妙子 新作!話題沸騰、品切続出!』
「……(みょ、明道妙子!出たんだ、やっと出たんだ!)」
明道妙子先生は有名な女流作家。私は先生の隠れファン。なぜ隠れるのか、特に理由はないのだけれど、大ファンと言うのには、気持ちが足りない気がしたから。今回だってそう、大ファンならば予約してもうすでに新作を手にしているはず、なのにそれをしない。
つまり私は全巻持っているけれど、発売よりも少し遅れて買ってしまう隠れファンなんだ。
時間を自由に使える私は、気分で本屋へ立ち寄った。