第3章 誘った理由
「あ…、えっと…」と時計の針を見ると、午前1時29分。
「…あと1分で終わりです。」
「え!?タイミング良すぎ!」
と櫻井さんは嬉しそうに言う。あれ、私今、仕事中なんだっけ?わからなくなってきた。
「もし迷惑じゃなければ、少し待っててもいいかな。」
頭の中には「なんでなんでなんでなんで」という言葉が右から左にループして流れていく。
そんな私を見て櫻井さんが「あ、や、嘘!…いや嘘じゃねえか、」と百面相をし始めたので、つい口元が緩む。
目の前にいる櫻井さんは、私のテレビのイメージと少し違った。ニュースを読む人で、頭が良くって、なんでも出来る、周りにいるとすれば、私が苦手な男性の部類。(キラキラしすぎて、眩しいんです。)
もう一度、時計の針を確認する。
「櫻井さん、私どうやらお仕事終わったようなんですが、さっきの言葉は、ナシ、ですか?」
「え!いや、アリです。」
驚いたように目を丸くする櫻井さんが子供のようで、面白かった。
「ふふ、すぐに支度します。」
2人しかいないスーパーのレジ付近。たった数分。私は櫻井さんという一人の男性に興味を持った。