第10章 隠れた気持ち
夢を見た。そのせいで目が冴える。
枕元にある時計に手を伸ばすと、時刻は深夜2時30分。カーテンの隙間から月明かりが差し込む。今夜はなんだか、外が薄暗い。もう深夜だっていうのに。
ベッドからおり、その月明かりの方へ出た。ライターでタバコに火を付ける。
丸い大きな月が俺を照らす。どうりで外が明るいわけだ。吸った煙を息と一緒に吐き出すと、明るい月に靄がかかる。
「・・・・、」
久しぶりに夢で見た君の顔。
「・・・会いたい、」
直接言えたらどんなに楽だろう。夢にまで見ることも、この独り言も、全てが女々しくて。そんな自分を鼻で笑ってしまった。
『オイラだったら―・・・』
智くんの言葉を思い出して携帯の電話帳を見る。履歴にはもういない君の番号。変わっているかもしれないのに、まだこんなに大切に持っている。鳴るはずのない番号。それなのにまだ君からの電話を期待する自分。
『待ってるだけじゃダメだよ。』
わかってる。だけどもう遅い。
の隣にはもう別の人がいるから。