第7章 突然のドライブは
「翔くん、いくらなんでも車はまずいんじゃ…」
「大丈夫だよ、もう暗いし。」
翔くんから、横浜行きたい!ドライブしたい!お願い、ついてきて!と急に言われた。断る理由がないし、ドライブ行きたいし、翔くんと一緒なら…い、いけない。これ以上言ってはいけない。隠れた気持ちを口にしてしまうと、絶対病気になってしまう。(恋という名の病、なんてありがちな病気。)
翔くんの車に乗るのは初めてだ。出来れば、並んで座りたいけれど、さすがに助手席に乗る勇気なんて、ない。
なぜなら翔くんには、マスコミという敵がいるから、いくら女友達でも、女は女なわけで、業界の人よりもファンの人に誤解を生むのが怖い。
私が後ろに乗り込むと、
「え、なんで。」という顔をして、運転席の翔くんが振り向く。
「いや、だって、ね?」
「ね?て言われても、ね?」
じゃあ…お言葉に甘えて…って、そんな首を傾げて可愛く言われても、ダメだ。危ない、うっかり助手席に座りそうになった。
「だ、ダメだよ。」
「折角のドライブなのに?」
「折角のドライブで友達でいられなくなるなんて、私嫌だよ。」
私の言葉に翔くんが言い返すのをやめた。
「…ん、ちゃんの言う通りだ。」
「うん、よかった。さっ、横浜行こう。ドライブなんて久しぶり!」
オッケー!と返事をする翔くんが、エンジンをかけて車を走らせた。
運転をする翔くんの後ろ姿を眺めて思った。
「マスコミに注意しなくちゃ」だなんて、私には丁度いい理由。
今の私が翔くんの横にいたら、友達以上を望んでしまいそうで怖かったから。
初めて食事した時は「友達」と言われたことが凄く嬉しかったのに、今は「友達」の次を望んでる。
私はなんて欲張りな女なんだろう。