どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第6章 新たな出会い
『パクやシャル、フランクリンにフィンクスやフェイタンまで居るっていうのは、流石に予想外だったけどね。お陰であたしも、あんたの“ヒソカを止められるくらい強くなりたい”って気持ち、よく分かったわ』
食紅で血糊を作りながらサキがそんな事を言うので、私は思わず彼女を見つめた。
『どうしたんですか?今日のサキ、凄く素直な気がします』
『悪かったわね、普段は素直じゃなくて』
『いいえ。どちらもサキらしくて、素敵だと思いますよ。ただ、ちょっと損してるかも、と思う時はありますけど』
『……言うようになったわよね、アンタ』
『そうですか?』
私は、くすりと笑う。そうかもしれない。少なくとも、はじめて会った時よりずっと、サキに親しみを感じている。
『あっと、そろそろ時間ね』
サキの見る腕時計の針が、18時を指そうとしていた。
『おやすみなさい、サキ』
「サキさん。私にも血糊頂けますか?少し乾いてきてしまって」
パタパタと、娘さんがこちらに駆け寄る。
私は時計を見ながら数回瞬きをして、ゴン達の来訪に備える娘さんに向かい振り返った。
「はい、勿論です!」
「……サキさん?」
どこか違和感を覚えたのだろう。娘さんが小首を傾げる。
「あぁ、すみません。私、今はサキじゃなくサチなんです。……なんて言っても、混乱させちゃいますよね」
私は照れ隠しに、自分の頬に手を添える。
私から、私という存在がサキの中に居る事を伝えるのは、これが初めてだ。
娘さんは頭の上にクエスチョンマークを並べている。
「えぇとつまり、この身体はサキのものなんですが……今彼女は眠っていて、代わりに私、サチが表に出てきているんです」
「それはまた……」
娘さんが興味深そうな面持ちで私を見つめる。と、その時、バサバサと羽音をさせて、奥さんが玄関先に降り立った。