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どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】

第5章 素性


『──ごめんなさい!無神経なこと言いました!!私は、サキの人生を否定するつもりは全く無いんです!』

私は心の中で、ばっと頭を下げる。

『たった今、“漫画で読んだ”とは言いましたが、“本当に”漫画の中なのかと言うと、微妙に違うんじゃないかと思っているんです』

目線を落としながら続ける私に、サキが眉根を寄せる。

『どういうこと?』

『……もし、“本当に”漫画の中に入ったとしたら、たとえ言外にほのめかされている事が多くあったとしても、実際に描かれている時系列と場所以外では動けないんじゃないでしょうか。でも今、私は原作が始まっていないにも関わらず、念があり、ハンターという職業があり、天空闘技場という場所が存在し、ヒソカの居る世界で過ごせている。つまりそれが、この世界の独立性と類似性を証明しているんじゃないか、と、そう思うんです』

私はサキに説明しながら、誰より自分を納得させているような気がした。ここが現実ではないと思えない、というのは、私がこの世界に着いて真っ先に感じた事柄だったからだ。今更、夢だとも思わない。

私がそこまで考えた辺りだろうか、サキはまるで呼吸を整えるように息を吐いた。

『……オーケー。とりあえずそういう事にしとく。はー……頭痛いわ。アンタが幽霊なのは千歩譲っていいわ。あたしに取り憑いてるのも、この際置いとくけど──』

“取り憑いてる”。
その単語に、私は“うわっ”と思った。
何故ならその語句があまりにも率直で適切、かつ有害な印象なのに、今の今まで無自覚だったからだ。

『ですよね、私、死んでるんですもんね、普通に考えて幽霊ですよね、取り憑いちゃってますよね……!うわぁごめんなさい!!今出て行き……どうやって出ていったらいいんでしょう?』

『今更!?つーかアタシに分かるワケないから!』

『……ですよねゴメンナサイ』

私は、しゅんと縮こまる。
本当に、どうやって出れば良いのだろう。この世界に来た時と同じだろうか?と心の中で息を吐き目を瞑るも、何かが起こる気配は皆無。『う〜ん』という私の唸り声がするだけだった。

『……なんて言うか、謙虚なふりして“自分は異界人で未来を知ってる”なんてさ、思い込みもここまで来るかって感じ』

『そんな、思い込みとかじゃ……!』
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