どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第2章 彼らの世界へ
どんっ、と肩が揺れる。
「あっ、すみません」
反射的に謝るも、意味が分からなかった。
ここが天国?いやいやいや、んなワケない。こんな俗世的な天国あってたまるか!っていうか肩?ぶつかった?なんで?
「チッ、気を付けろよ」
やっぱそれって見えてるって事ですよね?
夢?じゃない気もするし、見た事ない街だし、そもそも私死んでなかったっけ?それともそれが夢?いやいやそれならどう考えてもこっちの方が夢だろうし……。頭がくらくらする。
「あー!死んだ時より意味わかんない!」
やばい思わず叫んじゃった。
街行く人が、ちょっと距離を取ったのが分かる。口元を押さえるも、後の祭りだ。くつくつと、誰かの笑う声も聞こえる。ちょっと何これ恥ずかしい!
「キミ、面白いね。死んだことあるの?」
はっと顔を上げると、高身長でモデルかホストかと思うようなやたらイケメンのスーツの男性が、私に向かい目を細めていた。
うわーどうしよう、どうしよう!
「え、と、そんな気が、したんですが……」
ああ無理逃げ出したいですお母さん!良いですよね?当然ですよね!
「すみません、では急いでいるのでっ」
まともにこのイケメンさんの顔なんて見られるはずもなく、ばっと背を向け歩き出す。あーもう、私、どこ行くんだろう!知らない街、財布だって持ってないのに。
「どこに行くの?」
左手を引かれる。くるりと体が半回転した。
「ええと、それは……」
思わず口ごもる。すると男性は、またにこりと目を細めた。
わ、美形……じゃなくて!この人多分、私が行く所無いの気付いてるって。でもなんでこんなイケメンの人が、あ、ひょっとして、ホストクラブへでも勧誘される?カモだと思われてる!?それはまずい!大変よろしくない!!
「でも!私お金ないですから!」
「は?」
「だ、だから、その……私、ホストクラブとかには行けません!!」
本当に、本当に勇気を振り絞った一言だったのです。言い切った直後は自分を褒め称えたい気持ちになりました。が。
……清々しい思いで目を開けると、イケメンさんは私の左手を取ったまま、顔を伏せ肩を震わせていました。