どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第4章 異心同体
『そうですね、私も、本で読んだ程度しか分からないんですが──』
そう前置きするも、彼女とまともに会話できているのが嬉しくて、どこか得意になっている自分がいる事に気付く。
『──精孔という、身体中にあるオーラの出口を全て閉じ、オーラを絶った状態が“絶”です』
『オーラを絶った状態、ねぇ。どっから出てるのかもよく分かんないけど、取り敢えずやってみるか』
彼女は腕や足、肩の辺りを確認すると、すぅ、と息を吸い込んで目を瞑り、ゆっくりと吐き出した。
彼女の心が、凪いだ湖面のように感じられる。
私は彼女の邪魔をしないように、できるだけ無心に、彼女の感覚に寄り添うよう心掛けた。
彼女は、自分の身体を一センチ内側に凝縮している。
そんな気がした。
周囲のものが、相対的に存在感を増す。
『そろそろ着、く?』
エレベーターが身体に重力を伝えはじめる。
……はじめは、些細な違和感だった。
下の方で、一つ大きなオーラがある。
これに気付いた時点で、彼女がギクリとしたのが分かった。
『まさか、いや、そんなワケない』
近付いていくうち、大きなオーラを中心として移動する、小さな、というか漏れだしているような?オーラが複数あることに気付いた。恐らく非念能力者だろう。そんな風に意識していると、大きなオーラから飛び出したオーラに当たり、元より小さな彼らのオーラが、フッと更に小さくなるのが分かった。
──憂さ晴らしだ。
そう、直感した。
ヒソカがトランプを飛ばす様子が、ありありと想像できてしまう。
『アンタも、アレがアイツだとしか思えないワケね』
『……はい』
思い過ごしだと、どれだけ嬉しいだろう。
鼓動が早いのは、私のせい?それとも、彼女のもの?
彼女は、震える手にぐっと力を込めた。
どうする?私に何ができる?
そうだ彼は、どう動くだろう?
私は想像する。獲物を追いかけていち早く下まで辿り着き、周りの人間に当たり散らしつつもそこに留まる彼を。
そう、彼は待っているんだ。獲物が下りて来るのを。
そして、その方法の──
私はエレベーターが動き出したところでフッと消えたオーラを思い返す。
──見当も付いている。
心臓が大きく脈打っているのが分かる。
彼女は扉横の階数ボタンを背にすると、大きく息を吸い込み、吐いた。
『腹ァくくるわよ!』