どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第2章 彼らの世界へ
「……ん!?」
特訓開始、って言った?え?聞き間違い?
「だから、今は食事を楽しもう」
彼はにこりと微笑むと、マジメな話はこれでおしまいと言うように料理に向かうそぶりを見せた。
「ちょ、ちょっと待ってください!し、師匠になってくれるんですか?」
「うん」
彼は同じ調子でアッサリと返す。嬉しさを通り越して、肩透かしを食らった気分だ。
「でも“師匠”はよしてくれよ。僕達は同じ試験を受ける、言わば同志じゃないか」
同志。そう、だよね。私、ヒソカと同じ試験を受けるんだよね。
当然の事なのだけれど、今更ながらに自覚した気がした。
「でも、良いんですか?私、質問に答えられなかったのに」
「“会いたい人達”についてかい?」
「はい」
「いいよ。目的は“ハンター試験合格”。今はそれで充分だ」
それでも、良いのだろうかと思ってしまう私は、面倒臭い人間だろうか。
「不満かい?」
「いいえ、そうではないんですが」
「僕がどうして、大した情報を喋らない君を受け入れるのか理解できず不審に思っている、と」
……そうなのかも知れない。不審、とは言い方が悪いけれど、否定もできない。歯切れの悪い私に、彼は語りかける。
「一言で言うなら、得体が知れないからさ。君の場合、手元に置いた方が面白そうだからね」
あぁそうか。彼は勘付いているのだ。私が、得体が知れないと。
「それに、“会いたい人達”が誰かなんて、いずれ分かる事だろう?」
ヒソカが目を細める。ぎくりとした。そう、“いずれ分かる事”なのだ。なにせ試験会場には、彼だっているのだもの。
誤魔化し通せるだろうか?考えると頭痛がしたが、一先ずそれは脇に置くことにした。どうにかするしかないのだ。それよりも、彼が戦い方を教えてくれる事を、今は素直に喜ぼう。
そう思い至った途端、その事実を私の脳が認識してゆく。ぶわっ、と背中から頭のてっぺんへ、何か言いようのない感情が駆け上がり、思わず身震いした。
そうだ。ヒソカが私に、戦い方を教えてくれるのだ。
「よ……」
声が震える。
「よろしくお願いしますっ!!」
私は、精一杯の気合を込めて勢い良く頭を下げた。
否応なしに目に飛び込んでくる、白を基調とした上品な器とオードブル。それらがまるで黄門様の紋所のように、ここが高級レストランである事を思い出させた。
