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どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】

第8章 君の理由


『ただ、そうするとカナリ近しい人間になる必要があったわ。アイツが精神的な拠り所としてくるような、ね。……けど、懐に飛び込むのは身元を調べられたらアウトだから、無理。つまり対等……あるいは表向きには支援する立場になる必要があった。そのためには、大金は勿論、実績からなる信用が要ると思ったわ。あっちが表向き清廉な政治家なら、こっちも表向き、健全な資産家じゃないとね。だからそれからは、副産物のように手に入ったお金を元手に、投資家の真似事をしたのよ。幸い、あたしの耳が良いせいか、良くないコトしてんのに不用心な人間が多いせいか、景気が悪いときだって資金源には事欠かなかったわ。ま、あたしのしてることだって、道に外れてんのはよく理解してる。……ゆすって、搾取して、口止めしては渡り歩いて……そう言えばこの間死んだウィーズの奴も、まぁまぁ良い財源になってくれてたっけ』

なんて、サキはほんの二週間前の事を思い返す。
少しずつ、トンネル内の足音が聞こえ始めた。
……音がしていなかった訳など、ない。
つまりそれほどまでに、私達の意識は深くサキの過去に浸かっていたのだと、私は知った。

『……とまぁ、あたしの半生はこんな感じ。アイツをラジオで知ってから五年。まだ道半ばってとこだけど、最近思うように事が運ばなくて、ちょっと焦ってたのよね。あんな害虫早く駆除しなきゃなんないってのに』

軽い口調で言うも、内心穏やかじゃないのはハッキリと分かった。それでも、サキが敢えてその言い方をしているのはきっと、次の言葉のため。

『だから、念を覚える踏ん切りを付けられたことも、ハンター試験を受けるきっかけをくれたことも、アンタに感謝してる』

そう言って、サキは小さく笑った。

……複雑な感情が、私の胸に沸き上がる。
だってちっとも、感謝されるようなことじゃない。
サキは、復讐のために生きている。
それで、復讐が終わったら、どうするつもりでいる?
……サキは今、終わりに向かって再び進み始めたことに安堵しているの?

『なに?アンタひょっとして泣いてんの?』

『だって、だって……』

あんまりな仕打ちだと思った。
神様なんて、やっぱり居ないんだろうと思った。
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