第1章 criminal<クリミナル> -罪人ー
「そこにいらっしゃるのは…」
少年は先生から視線を逸らすと、カーテンの陰になり暗く
霞んで見える人影へと顔を向けた。
「この学園の校長、神鳥河誠先生よ」
先生がそう紹介した。
少年は校長へと向かい姿勢を正すと、玲子先生の時よりもさらに深く頭を下げた。
「挨拶が遅くなりすみませんでした」
少年の頬を風がスーッと撫でた。
「いや、気にせんで良い」
少年を招き入れた時の低くよく通る声。
「それより、想像していたよりも朗らかな子で安心したよ」
校長は、その皺だらけの顔に微かに笑みを浮かべた。
少年は安心したように少しだけ肩を撫で下ろした。
「恐れ入ります…」
少年は再度校長に頭を下げた。
すると、隣で微笑んで様子を見ていた近藤先生が姿勢を
擡げた。
「校長。では、私たちはこれで失礼します」
少年に気を取られていた校長へと軽く頭を下げる。
そして少年に会釈すると、重たい扉をグッと押した。
「さあ、出て」
少年は合図されるがままに、扉の外へと足を踏み出した。