第1章 criminal<クリミナル> -罪人ー
<壱>
ここは、神鳥河学園中等部校舎。
校内の奥深く、細く暗い一本道の先。
そこに少年が一人立っていた。
少年は左手に持った一枚の紙と、目の前の巨大な扉とを、
代わる代わるに見つめている。
その扉の上部、茶色のレンガ式の壁面には、―校長室―と
彫刻されたネーム板が取り付けられている。
扉自体、焦げ茶色の革素材で全体が覆われており、見事な程に
豪奢さを醸し出している。
しばらくすると、少年は手にしていた紙を丁寧に折り畳み、
着用している制服の胸ポケットに差し込んだ。
そっと右手を伸ばし扉をノックすると、一歩後ろへと退いた。
「入り給え」
よく響く低い声。その沈着冷静でテンポの良い返事に少年は
緊張を煽られたのか、先程よりも背筋をグッと持ち上げた。
金色のドアノブにそっと手を掛けると、神妙な顔付で
力一杯に扉を引いた。