第28章 やきもち。
「クックックッ」
『何で笑うの。』
「はっきり言わねェのがお前らしいな。ひねくれ女が。」
『ローだって言わないじゃん……』
「一回言っただろ。もっと言った方が良いか?」
あれは言った事になるのか?
そう思いながら、優しく愛を囁くローを思い浮かべた。
『ちょっと恐い……』
「てめェ……」
『ちゃんと分かってるから……良いです。』
ありふれた愛の言葉を並べられても何だか信じられない。
そんな事言われなくても
ローからは充分それが伝わってきて、体中に染み渡る。
「今すぐ抱きてェ。」
『ぅおい!何でそうなるの!?』
「色気の無ェ声出すんじゃねェよ。」
『その気にさせる様な事言ったっけ……』
「俺の事しか考えられないんだろ。」
『うん………』
「その方が真実味がある。俺も好きだとか愛してるなんて言う柄じゃねェ。」
『ふふ……』
ローとカナエは同じ感覚の様だ。少し嬉しい。
「それに、思ってても軽々しく言う事じゃねェしな。」
ローが少し寂しそうに見える。
あの人の事を思い出しているんだろうか。
きっと、あの時は最期だと分かって
愛してると伝えた。
『そうだね………。本当に………。』
「………もっとこっち来い。」
ローは掴んでいた腕を引いて、二人の距離は無くなった。
カナエの腰に手を置いて、首筋を唇で触れてくる。
『待っ……!トミダさんがいる!』
「寝てるだろ。」
『起きたらどうすんの!』
「知らねェよ。」
そう言いながら、ローはカナエの尻を撫で回し始めた。気持ちは嬉しいが、こんな所を人に見られたくない。
すると突然、ローの動きが止まった。
「カナエ、聞きてェ事がある。」
『何……?』
普段はお前とか、テメェしか言わない。
たまに名前で呼ばれると緊張する。
「元の世界に戻りたいと思うか?」
『…………え?』
カナエは胸がざわついた。
急展開過ぎるが、何かシリアスな話になりそうな予感がしたからだ。