第2章 おそ松
『………んっ、』
『あっ起きたー?』
顔にかかった髪を払おうと
身じろぎすると隣から声がした。
『おそ松兄ちゃん…。』
『そー、おそ松兄ちゃんです。
カラ松かと思った?ざんねーん。』
『あ…いや、そういう訳じゃ…っ』
『ぶはっ…おま、慌て過ぎぃっ!』
お腹を抱えて笑う姿を見て
無意識に入れていた力が抜けた。
良かった…いつもの
おそ松兄ちゃんだ。
ベットに寝かせられていた
その隣でおそ松兄ちゃんは笑う…
でも…ちょっと…、
『笑いすぎ…。』
『わりぃわりぃ…って
あぁ、…んで、体調はどーなの。』
息を整えたおそ松兄ちゃんは
ベットに上半身を寝そべり
私に視線を向けた。
体調は…不思議と悪くは無い。
『お前さぁずーっと
寝てたんだよー?ずっと。』
『今…何時?』
『えっ、知らない。』
『………えぇ、』
おそ松兄ちゃんは首振って
"興味無いもん"みたいな顔。
時計を探そうとすれば
部屋の電気の淡いオレンジが照らす。
薄暗い私の部屋…
カラ松兄ちゃんと会ったのは
夕方に差し掛かる時だったから
日を跨がずに起きたのか…な。
『まぁ、いいんでない?
明日は学校休みだしー。』
ニートのおそ松兄ちゃんは
毎日休みだけどと付け加え、
『休み…か、うん…そだね。』
『カラ松に感謝しないとなぁ?』
『………あはは、』
うまく笑えなくて
頬ぽりぽりと掻いていれば
おそ松兄ちゃんは溜息をついた
『まぁでも…胸の痕だけで
あれだけ豹変するなんてなぁ。』
『………え。』
『たかが、つまみ食いだろう?
なのにあーんなに怒ってさぁ、
ましてや今まで我慢してきた
なんやかんや投げ捨て去って
童貞卒業処女ゲットとか死ねっ』
ブーブーと文句を付ける
おそ松兄ちゃんに私は
声がかけられない…どうして、
『ずっるいよなぁー。
お兄ちゃん暴走する
年中松を抑えて帰宅してきたら
これだよ。酷くね?なぁなぁっ』
『なん…、で。』
『あっ?何が?』
きょとんと首を傾げて
私に顔を近づけてきた。
その距離が少し怖い。
カラ松兄ちゃんの事を思い出す…
『なんで、全部…知っ…』
言いかけたその先は
おそ松兄ちゃんの光なき瞳で
見つめられ言葉を…失った。
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