第2章 再開のスターティングブロック!!
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プールで一人泳ぐ少年の姿。なめらかに水を斬って進む彼の姿を見つめながら真琴はつぶやいた。
「相変わらず気持ち良さそうに泳ぐなぁ~」
「うん!イルカみたい!」
渚も感激した目で同意の念を示す。
「へへ。」
プールサイドを歩くぺたぺたとした音が聞こえ横を振りかえると、もう一人今泳ぐ直前の少年が飛び込み台の上にあがっていた。
「あれは・・・」
「あれは松岡凛君。先週僕達のクラスに転校してきた子だよ。」
凛はゴーグルをつけるといつもの癖で後ろからバンドを引っ張った。気合が入ったのか、前かがみになり一気に飛び込む。
渚は思わず凛が飛び込んだ後ろへ回り込み二人の様子を見つめた。
凛はどんどん先に泳いでいる少年へと近づいて行く。その速さはほぼ同じくらいだ。先に泳いでいた遙も凛に気付きライバル心を燃やしたのか一気にスピードを上げて行った。ターンもほぼ同時。
最初に帽子とゴーグルをとったのは遙だった。
「やっぱり水の中じゃ最強だね。ハルちゃん。」
真琴が遥に手を差しのべながら言うと、遙はふてくされたように手を取った。
「俺のことちゃん付けで呼ぶのそろそろやめろよ。」
「すっごくかっこよかったよ!七瀬君!僕もあんな風に泳ぎたいなぁ!」
渚がきらきらした目で遥を見つめる。渚にとって遙はあこがれの人だ。
凛も帽子とゴーグルを取り水の中から遥を見上げた。
「やっぱり噂通り早いな!タイムは?」
「・・・タイムに興味はない。」
素っ気ない返事に凛はしばらく呆けた顔をしていたが不意に声を出して笑い始めた。
「そう言うところも噂通りだ!・・・なぁ、七瀬。」
凛は水からあがり遥を見つめた。
「今度の大会、俺と一緒にリレーにでないか?」
小首をかしげて無邪気に問う。遙と凛の目が合う。しかし、返事は素っ気なかった。
「俺はフリーしか泳がないから。」
そう。タイムも勝ち負けもどうでもいい。大事なのは水を感じること。
肌で、目で、心で・・・そして感じたものを疑わないこと。
自分を信じること。水に抗うのではなく、受け入れる!互いの存在を認め合う!