【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
東南風の話「信頼と応えるという事」
備品の整備中、突然麻言が鍬を持ってないかと声を掛けてきた。
「否、持ってねえ」
簡潔に答えると、「そうかあ、解った。有難う」と麻言が踵を返そうとしたが、
「お頭から聞いたが、畑を作るらしいな」
「あ、うん! そうなんだ――」
「だったら、俺以外に頼っても恐らく無駄だぞ。この辺で畑を作ろうなんて考えの奴は滅多にいねえだろうしな」
俺がそう言うと、麻言明らかに落胆する様子を見せた。
まあ例え持ってる奴がいたとして、海風のあるこの辺じゃあ手入れが大変だ。
滅多に使わんものを几帳面に扱っているところなんぞ、まずないだろう。
あったとしても、錆びて傷んでいるのがオチだからな。
「そっかぁ、じゃあ鍬も町まで買い出たほうがいいなあ」
考え込むような仕草をしながら、独り言のように呟いている。
しかし、鍬か……、新品で買うとしたら鉄を使ってる分、ちょいと高いかもしんねえな。
「……おい」
「――はい?」
「お前、この後は暇か?」
「え? えっと、昼食作った後は暇だね」
「なら、丁度いい。その後付き合え」
それだけ言うと、俺は再び備品整備へと勤しんだ。
「東南風っ、あの~……」
なだらかに続く、畑が一望できる道を歩いている時だった。
数歩後ろを歩く麻言が声を掛けてきた。
それに「何だ?」と一言問いかけると、
「とりあえず付いてきたけど、今僕らは何処に向かってるの?」
その問いかけに俺は少し眉を顰めると
「――……言ってなかったか?」
「何も聞いてないねぇ」
「……そうか、悪ぃ。今農家に向かっている」
つうか、もうすぐ着く、と目前に見えてきた家屋を俺が指差すと、
「――もしかして、鍬を譲ってもらうの?」
「んな簡単にくれやしねぇよ。使い古したもんとかあれば、安く売って貰うんだよ」
「な、なるほどお」
解ってるのか解ってないのか実に微妙な返事だ。
しかし、記憶がないせいとはいえ……ここまで世間知らずだと、一人でおちおち外にも行かせらんねぇな。
そういえば、とふと思った。