【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
第三協栄丸が落ち着きを取り戻すと二人は再び、帰りを急いだ。
空ではもう夕日は沈みかかっており、現在二人がいた山道はすっかり暗くなっていたのだ。
往く道の右手には緩やかな斜面。背の高い木々が点々と生え並び大小様々な岩がそびえ立っている。
そして、左手は更に木々や草等が生い茂り、ふと横を見るとただの森の様に見えるのだが、実はかなり急な斜面で一歩でも踏み出せば間違いなく転げ落ちるだろう。
そんな景色を見ていて麻言はふと思ったのだ。
何となくだが、今歩いている道は今朝通った道ではないような気がしたのだ。
「あの、お頭この道は―」
「おっ、気付いてたか。実はこの道は近道でな、通るのは久々なんだが」
通常通りの道ならば、兵庫水軍の海へと帰り着く頃にはとっぷりと日が暮れているだろうと考えた第三協栄丸は、それより半時間程で行き着くこの道を選んだのだ。
今日たっぷり一年は組の相手をしていた麻言を気遣ってのことだった。
それだけじゃなく、色々あって疲れたろうし……早く帰って休ませてやらねえとな。
――すると。
そう考えていた第三協栄丸が、突然立ち止まった。
後ろにいた麻言にも手で静止を促す。
彼は眉根を寄せて、周囲へ敏感に目を配っていた。
「お頭……?」
きょとんとした顔で第三協栄丸を見ていたが。
その複数の影が正面から近づいて来るのに気づき、真顔になった。
「―おやぁ?シマを移したばっかりで、急にお客が来るとはなあ」
地面を這いずる様に低い声。
それを合図とばかりに第三協栄丸は背負っていた刀を引き抜いた。
「山賊だな、てめぇ等っ!」
険のある声で威嚇するように第三協栄丸が言うと。
ゆっくりと三人の男が姿を現した。
皆同様に薄汚れ、粗末な格好をしていた為夕闇に紛れてしまい一人ひとりの細かい風貌は確認できないものの皆その背に刀を背負っていた。
「そういう、てめぇ等はもしや海賊じゃあねえか?僅かに磯くせえ香りがしやがらぁ」