第3章 貴方を忘れる為に
ピピピ
「あら、まだ38度も熱があるじゃない、とりあえず寝てて、先生
これから会議があるから」
「はい...」
あのあと見事に顔を真っ赤にして倒れた私は、茜と誰かに運ばれ、保健室のベッドで寝て今、昼休みになりました。
ーコンコンーガラガラ
「...荒瀬、大丈夫?」
「何しに来た..ってひかる..君?!」
茜かと思って嫌味を言おうとしたが、声が全く違ったので声が裏返ってしまう、
この人に失恋したのに慌てて起き上がり身なりを整えてしまう自分に悪態をつきながら
「ど、どうしたの?」
「いや、さっきそこで怪我をしちゃってさ、先生居ないみたいだけど..勝手にやってもバレないよな」
と、血だらけの手のひらを見せて少し痛そうに顔をしかめながら
手を洗い、絆創膏を貼ったが、片手だけだと少し難しいのか、はみ出したりしたので
「私..手伝ってもいい?」
と、いうと、彼は少し驚いて
「え、いいの?..よろしく」
私には応急処置の心得があるため、このくらいの傷の手当てはおちゃのこさいさいだ。
「これ、なんかで切ったの?痛そう..」
結構深く、広い範囲に切られているから気になって聞くと、
「カッターで手を滑らせて切っちゃった、俺って不器用だからさ」
いやあ情けない、と苦笑いするひかるのその顔にも見入ってしまい、やっぱり私、このひとの事好きなんだなぁ、と思っていると、ひかるは急に真剣な表情になり
「..荒瀬、本当に茜と付き合ってんの?」
「..そ、そう、だよ?」
そんな顔で見ないでよ、私に気なんかないくせに...
「俺に好きっていったのは嘘?」
「嘘、だよ?」
やめて、嘘じゃないの...言えないよ..
そう心のなかで思う度に涙が零れる
「本当?泣いてるよ?」
「泣いてなっ..!?」
顔を隠そうとしたとたん抱き上げられて、背中をとんとん叩きながらひかるがなにか言おうとしたとき
ガラガラッ
「はーいそこまでー、俺の彼女になーにしてくれちゃってんのかなー?」
と、まるでスタンバイしてたかのように勢い良くドアを開けられひかるを睨みつけた。ひかるはあくまで冷静を装い、
「盗み聞きは良くないよ?茜」
「人の彼女に手を出そうとしてる奴がなーにいってるんですかー?」
荒瀬凪、16歳にして最大のめんどくさいやつに当たりました。